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<開発の経緯>■1はじめに 今まで言われてやって来た方法でやっても何でニュアンスが違うんだろう?
原点の発掘
■ 日本のフォルクローレのリズムの発見(探求) ある時、日本民謡の津軽三味線奏者の方と仕事を通して知り合い、打ち上げで酒を飲みながら、日本のもみ手(宴会パルマ)の間の中味(リズム)って何ですか?と尋ねたところ、酔いも手伝っていい気分で「ハァ〜〜〜」と船を魯で漕ぐ真似をして日本民謡唄ってくれました。「!!」一緒に手拍子を打っていた私。何の違和感もなく彼の歌に のれ ( ●● ) ました。 ※ 日本は島国だから生活手段に船、山は馬。でも、
■2スペインフォルクローレの探求 スペイン人の友人のフラメンコギタリストと唄い手が、馬を持っていると聞いたことがあり、「えっ!何で?」馬と緑のない生活をして来た私にとって、とても不思議な感じで、しかもその一人が「何頭もいて飼育している」と言うのです。更に腑に落ちない顔をしている私に「スペインの地方、郊外では普通だよ」と。私は「何でそんなに馬が好きなの?」と訊ねたら「スペインは馬の国だからだよ」…
昔からスペインは大陸で広いために、移動手段として馬を使い、その際、走らせたり(タッタカ、タッタカ、タッタカ A )小走り(タカタ、タカタ、タカタ B )と、その音を生活の中で常に聞いていたと思われます。特に流浪の民であったジプシー達が定住するまでその移動手段は馬であったことは想像出来ることです。
このことから、そう言えばフラメンコの唄の中に馬が登場するし、フィン・デ・フィエスタのブレリアで馬に乗っかっている振りもある。また、3拍子の原点はギャロップ、馬の歩様とも言われています。 となります。 そして日本のフォルクローレの時と同じ考え方をすると、この音がフラメンコのパルマの“間”(リズム)の中味ということになり、またフラメンコのリズムの原点とも言えそうです。
■3クルシージョにて(中味) 以前、ペパ・マルティネスのクルシージョでヌメロを決める際、 Ca ( カルロス ) 「ベルディアレスやってもらえるかな?」 Pe ( ペパ ) 「う〜ん、すごくフォルクロール的(民族)だからね」 と、あまり気が進まない様子。結局その時は、ファンダンゴ・アバンドラオになりました。 更に私自身のクラスで取り入れてみました。
■4“リズム”の性格 “リズム”は、感覚の世界のものです。 G ( ギター ) 「今のパソもう一度やって。センティードどうなってる?」 B ( バイレ ) 「えっ!解らない。何も考えてなかったから」 このような会話がどれだけ繰り返されたか分かりません。後でゆっくりやって考えて、そのセンティードを思い出そうとしても出来ません。勿論ギターが即興的にファルセーターを作る場合もそうです。
●5何も考えていない=無意識=潜在意識 これは、ある哲学書に書かれていたことですが、自分自身が意識して物事を考えなくても、勝手に色々な事柄が頭に浮かんでくること。これは無意識の中での潜在意識の領域の作用である。逆に、例えば、自分がある目的地に行く時、その方法を意識的に考えること(バスに乗って、どこで乗り換えて地下鉄でなど)を実在意識の領域作用といいます。 このことから“リズム”は、無意識の中の潜在意識の領域の作用ではないかと思いました。 実際にギターを弾く時、踊る時、唄う時は、始めはリズムを考えていると思いますが、始まったら弾くこと、踊ること、唄うことに集中し、リズムのことは考えていないと思います。少なくとも自分がそうであることに気が付きました。 ※この事は、多くの日本人に宴会パルマを叩かせ、その瞬間何を考えていたか聞いころ、「何も」でした。
●実験 スペイン人に日本の宴会パルマ(もみ手)を叩かせたところ、3拍子になってしまい、アクセントなしでと注意し、もう一度やらせても、最初は意識しているためいいのですが、少しするとアクセントがついてしまい3拍子になってしまいました。 「今注意したこと、もう忘れてる。頭の問題!」どこかで聞いたセリフです。 逆に日本人の場合「アクセントがない」「アクセントが足りない」「アクセントを付けると、全部音が強い」と言われます。これは、日本人の潜在意識の中にあるリズムは宴会パルマ(もみ手)=1拍子ということが想像できそうです。
●6潜在意識は、実在意識の習慣の事柄が蓄積される。 スペイン人化⇒スペインの原点となるリズム(セビジャーナス、ファンダンゴ)を入れる。 この事は「暗示」に似ているとは思いますが、例えば私など子供の頃から「お前はバカだ!頭が悪い!」と常に言われて育って来たために、大人になってもそう思って来ました。事実、当たっていることもあると思いますが(笑) このような話は他の人からも聞いたことがあり、本当に大人になってもバカだと思っているようでした。
● D 人間の能力の利用 もし、この考えが正しければ、必ず何か自分自身のリズム感覚に変化があるはず。見出した「スペインの原点のリズム」「人間の能力」を利用し、潜在意識の中に取り入れる作業を自分のクラスで始めました。 その後3ヶ月位過ぎた頃、以前よく聴いていたCDを久し振りに聴いたところ、今まで聴こえなかった“唄のアクセント”が聴こえ、しかもファンダンゴのアクセントが聴こえて来ました(唄はアレグリアス) ちょうどその頃、ある雑誌のインタビューで、アルカンヘルがファンダンゴ・デ・ウエルバが唄えると、アレグリアス、ソレア、シギリージャも唄えるようになると言っていた記事を目にし、自分の考え、方向性に自信を持ちました。そして、その成果が生徒にも表れて来ました。 青年A君:マルティネーテを聴きながら、タンゴ、ブレリア、シギリージャはもちろんファンダンゴをパルマで叩いていました。効果アリです。
■7ワクを探す 確かにこのやり方(潜在意識にスペインのリズム原点を取り入れる)で、一定の効果はありましたが、何か物足りなさ“コンパスのアクセント”を感じました。メトロノームでティエンポ、3拍子、4拍子を出し、それと共にやっていたので、ティエンポの正確さはありました。しかし「何か足りない」と強く感じたのです。悩み探しました。
■8ベレン・マジャ 以前ベレン・マジャにタンゴのパルマを叩いてもらった時 この様に叩きました(因みに×はバセ{足}) Ca ( カルロス ) 「何でBを一番強く打つの?」 Be ( ベレン ) 「一番長い音だから」 Ca「長いから一番強く打つの?」 Be「そう」
この時は、あまり深く考えず「アクセントは長い音なんだ」程度に思っていましたが、音にはアクセントじゃない音。アクセントがあっても少し弱い音があることに気が付きました。タンゴのパルマでも@Bの違う強さを持っていて、Aはそれよりも弱い。 「強さ=長い、弱さ=短い」強弱を長短で表すことになります。 音の長さ? 馴染みがありませんが、音符には とそれぞれの音の長さを表すものがあります。 このことから、タンゴのコンパスの4拍は、違う長さの音の集まりと言えそうでした。だとしたら、それぞれの音の長さのその基準は? 新たな疑問です。
■9音の長さの規則を求めて スペインのフォルクローレを求めての項で、その原点のリズム クラスでやっていて解ったことで 例えば B の場合 このようなアクセントで使われる場合があり、例えばギターでは、ブレリアの締めるときのラスギャードの使い方。踊りでも このパターンはアレグリアス、ソレア・ポル・ブレリアなどで、ジャマーダの後半によく D E のよう聞こえるように取り方を F から G に変えてみました。 「コンパスのルーツ発見」です。
■10・11いや!待て、待て 「コンパスのルーツ発見」といっても、自分が思っているだけです。これは、当然スペイン人に試さなければなりません。 ちょうどその頃、クルシージョでペパ・マルティネスが来日し、早速「ブレリア、アレグリ」を試しました。結果は最高でした。
Pe ( ペパ ) 「なんでメトロノームでブレリアが出来るの?」 Ca ( カルロス ) 「頭」 Pe ( ペパ ) 「よくやったね。信じられない!!」 まず、一人OKです。 次は、我が師匠、ジプシーのディエゴ・ロサーダです。メトロノーム(原点のリズム)を鳴らし、ブレリア、アレグリ、シギリージャのコンパスのアクセントをジャンベ(西アフリカの太鼓)で出し、録音し、スペインに送りました。結果は、最高でした。 Di ( ディエゴ ) 「メトロノームでフラメンコのコンパスが出来ること、しかも、アイレ、ソニケーテがあるなんて信じられない」 Ca ( カルロス ) 「へへへへっ!」 Di「お前、気が付いてるか?ブレリアが出来たならフラメンコの全てのパロも生み出せるぞ」 Ca「当然、分かってるよ」
補足ですが、自分の考え方では、ブレリアは全てのパロのコンパスの基本と思っていました。タンゴなど2拍子系と言われるものも含めてです。
次はアドリアン・ガリアです。
■12・13新たなるカベ コンパスのルーツ発見とはいうものの、その実は、 で9つの音から6拍を生み出しただけで、余分な音が3つもあり、それを取り、表記にすると こうなり、3連の中ヌキにしかなりません。実際やってみて、音の世界では、コンパスに聴こえるのですが、理論的にこれでは筋が通りません。要は9から6を生み出せば良いのですが、割り算をすれば1、5と言うことになります。しかし、コンパスはアクセントだらけ、アクセントの強弱=音の長さの長短(長さの違う音の集まり)ということを考えれば、6つ全ての音が均等、同じ長さということはありえず、6つの均等の長さなら、アクセントは存在しないことになります。これでは何の進展もなく、今までと何ら変わらない事実に止まることになり、このフラメンコの世界に絶対的なひとつの基準が確立しません。 諦めてはいません・・・・・るか(江戸弁です)」 「しょうがねぇや、師匠の力を借り ってなことで、スペイン、師匠の許へ旅立つことにしました。
■14・15スペインにて長短を決める ●要はこのようになることです。しかも音の長さが均等でなく。
●音の長短を数の比率で表す 長短2種類に分けた音を、具体的な数字に置き換えることを思いつき、散々考えた挙句、長音 a という長さ、3の倍数の数からその音として仮に決め、そして、短音 b を a 音より数字にして1短く決め、PC上に a b をそれぞれの長さの間隔で6つ交互に並べてみました。
●実験 初の養殖ブレリアです。 Di ( ディエゴ ) 「う〜ん悪くないけど何か違うね。自然な感じじゃないね」 Ca ( カルロス ) 「自分も聴いていて分る!自然じゃない」 2つの音の長さの差があり過ぎる感じがしました。思ったよりも a b の差が少ないのかとも考えました。 出した答えが a を倍にして、そこから数字の1短くした音が b としました。そして再びPCでプログラム。再生、師匠に弾いてもらいました。 Di「うん、今度は良いね」 Ca「自然な感じする?」 Di「うん!」 これで、この日は最大の問題であった音の長短を決めることが出来たので、私もホッと一段落。翌日に12の組み合わせを作ることにし、師匠と息子(ピノ)と3人で食事に行きました。滞在残りあと3日でした。(9日間の予定で、実はここまで6日間費やしてました。)
■16何か 食事から戻り、部屋でひとり今日のことを思い出していると、“何か”が気になりました。
●マドリの雪 翌日は時差ぼけもあって、朝5時頃目が覚め、外を見ると雪でした。スペインで初めての雪に嬉しくなり、散歩に出ました。問題はあれど気分爽快!!などと思いながら1時間程散歩し部屋に戻りました。
■17コンパスは2声 Ca ( カルロス ) 「この × コンパスのアクセントどこまで伸びてるの?」
このことから、コンパスのベースのアクセントは独立していて、それぞれの長さを持ち 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
整理すると 12・3 3拍 の長さを持っていることになり、パルマのアクセントと足のアクセントは別に考えることが出来ます。
■18迷ったら原点 いつもしていることですが、“道に迷ったら原点”に戻り、考え直す。もう一度、コンパス原点を考えてみました。 これを見る限り1・3・5の音は長い音a 2・4・6は短い音bです。 上記の長短音のコンパスに対しての当てはめ方だと、@図の3は長い音ですが、6とA図の2・4・6が短い音となります。
■ 20 解決 早速師匠のところへ行き、前日のプログラムとは逆の並びでプログラムし、まずブレリアのメディオを再生し、ギターを弾き試してもらいました。 最初は探りながら弾いている感じでしたが、その後すぐに自由に弾きだし、ギターの音とメトロノームの機械音とハーモニーを生み出していました。
■ 21 日本へ送信 その日のうちに全てのパロのプログラムを作り上げ、日本にデーターをメールで送信しました。これで自分に何かあっても、データーは残りますから、安心して飛行機に乗れます。 でも、家族全員が祝福してくれ、本当に嬉しく、ありがたく、協力してくれた師匠一家に感謝の念でいっぱいでした。
■ 帰り道 帰りの飛行機の中で段々と嬉しさが込み上げて来て「ここまで25年かぁ。。。早かったな」なんて思いながら、少しだけ自分を褒めてやりました。
■ 22 メトロノーム化 作り上げたデーターをメトロノームにするため、費用などを知りたく、国内のメトロノームメーカーに問合せ、動き出しましたが、何しろこちら素人、驚かされることばかりでした。 某有名メーカーは、電話で問合せたところ、具体的な内容を知りたがる、誘導尋問のよう。最後にアコーズという某有名メーカーのメトロノームを作っている会社に出会い、とんとん拍子に話が進みました。
■ 23 メトロ開発 さて、開発に取り掛かってからがまた、大変でした。 音の回数 一定=同じ音の長さです。 これが常識ですし、世界の音楽界がメトロノームに持つ観念でありますから、彼らも当然同じ考え方を持っていて当然です。 しかし、こちらの要求は、音の幅は一定でなく(法則あり)割り算を使うな(従来通りの方法だと A の方式。割り算ですと必ず余りが出る。人間の感覚で分からない小数点以下で切捨てる方法)そうすると各音の長さが微妙に違う音が発生します。これでは、こちらが開発、具体的に数字で指定した音のプログラムが正確に再現出来ません。技術者も頭を抱えてしまいました。
■ 24 “物作り 日本を支える”優秀な技術者達 数ヶ月が経ち、デモ機が出来たとの連絡に工場へ。聴かせてもらい、大丈夫そうなのでその音源(プログラム)をスペインの師匠に送り、試してもらったところ「Muy bien!」で合格です。また、アドリアンにも送ったところ、シギリージャでしたが「何で機械なのに人間のSentimientoがあるの」と絶賛でした。
■25 特許だ このフラメンコメトロノームMRC-1 EQUIPO HARADAのプログラムは、特許出願中です。
あとがき
自分はこのメトロノームを作っていく段階で色々なことを学びました。
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有限会社ジェイ・ピー・カルロス
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